陶器の話

「削って形を出しているものもある」~器の見方

maruzo_kun

ある程度乾いた作品をもう一度ろくろに逆さ向けて乗せ、回しながらカンナを当てて大根のかぶらむきの様にスルスルスル~っと削っている様子を、テレビや動画などで一度は見たことがあるのではないでしょうか?

そのまんま「削り」と呼ばれているようです。このやり方で高台を作ったり、腰の部分の形を出したりします。器の見方を説明している中で「」について書いたので、その流れで削りについても触れてみようと思います。作り方には多種多様ありますが、削りまでが作業工程になっている事も多いでしょう。

削りのメリット

削りをする一つ目のメリットは、簡単であると言う事です。いえ、もちろん実際は技術がいるのですが、例えば高台を作る時に付け高台にするのか削り出すのかでは、難しさが変わります。腰に関しても、こちらの記事でも解説していますが、削って余計な土を取っていく方が容易だと思います。

二つ目のメリットは、思い通りに軽くすることが出来るという点だと思います。ろくろで引くだけでは薄くするのには限界があります。余りに薄くしすぎると、ぐにゃっとひしゃげて崩れてしまいます。その点削りでは、硬くなってから削っていくので容易に薄く、軽い作品に仕上げる事が出来ます。

三つ目は、イメージしたかたちに近づけることが出来るという点でしょう。特に初心者の方だと、ろくろだけで作りたい形にすると言うのは難しいと思います。また例えば、はっきりとした角を出したい時などは削りでないと難しいでしょう。どちらかと言うと固いイメージの作品に合っている技法で、柔らかさを出すのには適さないかもしれません。

四つ目のメリットは、形を揃えやすいという点でしょう。ろくろでどんどん同じ商品を作っていくというのはそれこそ職人技です。何年も、何十年もそればかりやっている職人さんは、寸分違わないものを淡々と作っていかれます。スピードも大変や早いです。しかしそうでない場合、もしくはそう言った経験の有無に関係なく一つの製作法として、削りは有効でしょう。

削りのデメリット

まず一つ目は、中心を取るのが難しいという点です。ろくろで回転させながら削る場合、作品を正確に真ん中に合わせないと回転させたときにブレてしまいます。ろくろに直接置いて、少し水を付ける事でろくろ面と密着させたり、「シッタ」と言うものの上に被せるように置いて削ることもあります。これには練習が必要。ろくろで引いて完結させるのにも技術が必要ですが、削りをするのも中心を合わせるスキルが必要という事です。結局どこかは難しいのですね。

二つ目のデメリットは、削りカスが沢山出るという点です。高台も削って出すことが多いですが、かなりの削りカスが出ます。これらは集めて再利用する事が出来ますが、作業場は散らかるし、再利用にもひと手間必要になります。削りなしで完成させることが出来るのなら、そちらの方が楽だと思います。

三つ目のデメリットは、手作りの温かみが無くなるという点です。逆を言うと、初心者の方でも最終的にある程度の作品に仕上げる事が出来るとも言えるかもしれません。ただ、例えば陶芸教室などで仕上げで先生が削ってくれるようなところですと、結局自分の作品だったかどうか分からなくなりかねません。自分が作ったものと違うな、と。
雰囲気は、削りなしだとアナログ、削りで仕上げればデジタルぽいと言いましょうか。温かみがあるか、キリっと仕上がっているか。ろくろだけでもキリっとさせる事は出来ますが、メリットの所でもふれたように明確な角を出すなどは削りでないと出来ませんね。


削るのにも、削らないのにもどちらが良いとか優れているとかはなく、それぞれの特色があります。削らなければどこか人間味が残ります。削って仕上げれば、型や機械で作られたようなスッとした仕上がりになります。どちらが自分の作風に合うか、どちらの雰囲気が好みか、と言う事ですね。

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まるぞうくん
まるぞうくん
ねずみの男の子
まるぞうくんは、一緒に暮らしているお兄さんがやっている、陶芸をいつも見ていました。

そうするうちに自分もやりたくなっちゃって、教えてもらって始めたのでした。
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