陶器の話

「見込み」について~器の見方

maruzo_kun

「良い器」って何なのでしょうか。ステキな柄が描かれている?装飾が美しい?それらも器を楽しむうえで大切な要素ですよね。ただ前提として、ぼくはまずは”かたちそのもの“が大切だと考えています。そう、工芸はかたちです。では”良いかたち”って何なのでしょうか。実はいくつか見ると良いポイントがあります。その一つが、「見込み」です。見込みとは部分の呼び名なんですが、どこの事かと言うと内側の底のこと。ただ文章だけでは分かりにくいので、下のような写真を用意してみました。

赤い影になっている辺りを見込みと呼んでいます。この見込みをどう見るのか。見込みは広い方が良いんです。見込みが広い方が、上手に作られていると分かります。「見込みが広いってどういう事?」ってなりますよね。ちょっと図にして説明してみます。

これは器を輪切りにした図です。外側の形は全く同じ。ただし見込みの形を変えています。左側が見込みが広い、右側が見込みが狭い様になっています。

改めて見込みの部分を赤く表してみました。左の方が広い、右の方が狭いという事が分かってもらえますか?これが見込みが広い、狭いという事です。ただそれは分かったけれど、「どうして広い方が良いの?」と言う次の疑問が湧くかもしれません。見込みが広い方が良い理由の一つは、「見込みが狭いと重くなりやすい」という事です。

矢印の箇所の事を”“と言います。ここでまた新しい呼び名が出てきましたね。”腰”と言う名前が付いているだけあって、器にとってとても大事な場所になります。外側の造形は、やはり最初に目に入るところなので造りたい理想のイメージ近づけられます。ただその時に見込みが狭くなってしまっていたらどうなるか。図の右側の様に、腰に余分な土が残っていることになるんです。すると左側の器よりも土が多くついているので、当然重くなってしまいます。(図を作る関係で上の方まで土が付いているような、やや極端な見え方になってしまっていますが、、)
重さはとても大切です。軽すぎても良くないのですが、特に普段使いするものであれば重いと使いにくさを感じる事に繋がります。疲れてしまうというと大げさに感じるかもしれませんが、決して過大に表現しているわけではないんです。なんとなく使用頻度の高い食器ってないですか?重さだけではないと思いますが、きっとそれは使いやすいと感じていて、もし食器棚の奥にしまいっ放しになっている物があるのなら、それはもしかしたら意識していなかったとしても使いにくいと感じているのかも知れません。まず作品や商品を見て、そして手に取った時に感じる適切な重さ、心地よさと言うのは、感覚としてとても大事です。

もう一つの見込みが広い方が良いとされるシンプルな理由として、「技術が必要」と言う事です。器を造っている時の土は当然柔らかいです。その時に腰を薄くしすぎると、上の重さに耐えきれずに腰が落ちてしまうんです。ふにゃっと下がってしまうんですね。腰は一番角度が付いている部分なので、そこが薄く、上が重ければ倒れてしまうイメージです。だから腰は分厚い方が簡単なんです。そこが薄いと、「すごい、上手い」となる訳です。


最後にこれはあくまでも感性の話になると思うのですが、見込みが広いとそこに広がりを感じる事が出来て美しいということです。何を美しいと感じて何をそうでないと感じるかと言うのは人それぞれの感性なので、これは決めつけるものではないと思います。

空間的な広がりを感じる、なんとなくそんなイメージを図にしてみました。どんなものでもそうですが、良いものをたくさん見る事で目は養われます。ただその良いものと言うのが、結局自分で見ているだけでは難しいです。値段が高ければ良いと言う訳でもない。骨董品だから良いと言う訳でもない。陶芸以外のものにもたくさん触れる事が大切だと思います。自然が生み出すかたちなんかはどれも完璧ですよね。種の形、葉っぱ、虫、木々のカーブなど。建築や洋服も面白いです。もちろん時々美術館などへ行って、”本物”にも触れると良いと思います。


器の見方も人の見方も似ているなと感じます。外側がカッコいい、柄や装飾がすごい、でも大事なのは内側です。内側が美しくないと、その影響はどこかに必ず内在することになります。面白いですよね。今度出店やフリマなどへ行く機会があれば、ぜひ見込みを見てみてください!

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まるぞうくん
まるぞうくん
ねずみの男の子
まるぞうくんは、一緒に暮らしているお兄さんがやっている、陶芸をいつも見ていました。

そうするうちに自分もやりたくなっちゃって、教えてもらって始めたのでした。
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