「腰」について~器の見方
「見込み」の話の中でも少し出てきたのですが、器には「腰」と呼ばれる個所があります。どの部分の事かと言いますと、下の図の赤丸の部分です。※器の断面を図にしています。
この腰の部分の土がしっかり取れているかどうか。ここで造る人の技量が試されます。どういう事かと言いますと、腰にたくさん土がある方が簡単で、薄くしようとするほど難しいからです。腰にたくさん土があるのはいけないのか?もちろんダメではないのですが、土が沢山ついていれば当然重くなってしまいます。上手な人の造る器は軽いという事です。余りに軽すぎてもバランスが悪くなるのですが、重心がどこにあるか、重さが丁度良いかどうかなど、手に取った時の重さの感触というのは意外と重要です。
腰の部分を薄くするのがどうして難しいかと言いますと、土をろくろで引いている時は、土は当然柔らかいです。器の形になっていく時に、腰の部分にはそれより上の土の重さがかかってきます。しかも縦にまっすぐではなく、斜めにせり出す形になります。なので腰を薄くしすぎると、下で支えている部分が重さに耐えきれず、ふにゃっと腰が下がってしまうんです。そうなるともうそこから元に戻すことは難しい。絶妙な薄さに技を感じると言う訳です。
またそれと同時に、腰に土が沢山ついているという事は、内側のかたちが良くない場合があります。これは「見込み」の話の中で説明しています。
赤い線の部分が「見込み」と呼ばれる部分なのですが、右の図のように見込みが狭くなると必然的に腰の土の厚みが増します。ちなみにこの図の外側の形状は全く同じです。「見込みが広い方が良い」と言う話なのですが、結局見込みと腰は関係しあっています。
最後になりますが、この腰の様子で、器の雰囲気自体が大きく変わってきます。腰が力強く、のびのびとした形をしているか。さらに腰にメリハリが効いていると、それも魅力的に映ります。どれも抽象的な表現ですみません。
腰の厚みは触れば大体分かります。ろくろではなく型で造った型物ではそう言った概念はありませんが、もし手作りの器をお店や個展などで見かける事があれば、一度この腰の部分を触ってみると面白いかもしれません。